第14回海外親善訪問旅行(ロシア・ウクライナ公演)報告
シェフチェンコ記念オペラ・バレー劇場
キエフヘ
12日午前中、自由行動にした。いくつかのグループに分かれ、買い物に出かけた。ロシア正教会への参道に民芸品や絵画などが所狭しと並んで売られていた。午後、空路ロシアを離れてウクライナの主都キエフに入った。空港に極東慈善財団のポピク会長を初め、役員の方々が出迎えて下さる。早速演奏会場となる、シュフチェンコ記念キエフオペラ・バレー劇場を訪れる。さすが世界に誇る劇場だけあて、外観の偉容といい、オペラハウスに独特なステージと会場の作りに、圧倒される。劇場正面の横断幕に「天理雅楽・神秘の大和」とウクライナ語で大書してあり、ガラスケースに美しく彩られた自分たちのポスターが貼られているのに感激する。楽屋に荷物を運びいれ、舞台を見学し、明日の演奏会を思い描きながら、思い思いにステージの感触を味わった。
当初この劇場で演奏会をする計画は、ポピク会長にも極東慈善財団にもなかった。下見の折、ピポクさんの案内で曽山さんと共に、予定していた市民劇場へ向かう途中、このオペラハウスの前を通った。「ここで演奏できたらいいね」との佐藤のひとことで、電話してみようということになった。首尾よく責任者が会って下さるという。来客の様子で暫く控え室で待っていたが、やがて総支配人室のシュプリーナ・ペトロ・ヤコビッチさんにお会いし、絵葉書を見てもらいながら雅楽の説明をした。いたく興味を示され、明春の予定表を繰りながら、3月の13日なら空いているというので、その場で決まったのである。まさに「瓢箪から駒」である。プレスの会見に出席する一部のものを除いて、駐ウクライナ本田均大使主催のパーティーに出席するため、大使公邸にでかける。プレスインタビューは、日本食レストランで開かれた。約20人ほどの記者、カメラマン、テレビクルーが待ち構えていた。ピポクさんの挨拶の後、佐藤団長が簡単な雅楽と明日の公演についての説明を行い、質疑応答にうつった。雅楽と宗教の関わりなどかなり専門的な質問が続いた。最後に一管立で舞楽「抜頭」を演じた。この模様は、当日夜のニュースで放送された。大使公邸では、大使ご夫妻の心からなる持て成しを受け、久しぶりの和食に舌鼓を打ち、美酒に酔った。慣れぬ気候と強行スケジュールでバテ気味の一行に活力が戻った。風邪でダウンし、宿舎で休んでいるもののために、お持ち帰り用の食事を用意して下さった。お礼に「抜頭」を舞い、お面をプレゼントした。
舞楽「抜頭」
オペラ・バレー劇場
オペラ・バレー劇場前
垂れ幕には
「天理雅楽・神秘の大和」
キエフ・オペラ劇場での公演
演奏当日は、朝から会場に入り、念入りに舞台の設営を行った。照明の担当者と打ち合わせをするが、何か大雑把である。折角の晴れ舞台であるから、こちらは念入りにと思っているのに、女性のディレクターは「心配ない、問題ない」を繰り返すばかりである。機材は、コンピュータシステムのいいものが備えられている。しかし、回路の電気が切れていたり、指定した色が出なかったりと、メンテナンスがなっていない。本番が聊か心配である。午後から休養を兼ねて、近くの聖ミカエル寺院などを見学した。ロシアでもそうであったが、ここウクライナも正教が力を盛り返し、寺院の修復が鋭意進められている。午後7時からの公演に、早くから開場を待つ人で溢れ始めた。1300席全部売りきれであるという。財団が作ったパンフもカラー刷りで良くできていた。会場を埋め尽くした人の熱気に、演ずる方にも自然気力が高まってくる。管絃、謡物と静かな曲が終わると、拍手も柔らかな感じ、「納曾利」「太平楽」が終わると、力強い拍手となり、アンコール用に用意した「抜頭」で舞人が舞の途中で面を外し、その面を主催者に贈呈すると万雷の拍手となった。やはり心配したように、設備の割には思ったように照明の効果が出せなった。これは、翌日、劇場と財団の好意で、同劇場でのバレーの公演を鑑賞させていただいたときも同じであった。演奏会は、大成功であった。極東慈善団体のポピク会長を中心とした努力、本田大使を初め、日本大使館の協力、企業の方々の援助など、多くの方の合力の御陰である。曽山さんは、自教会の用のため、翌日帰国した。
14日は、見学日として、キエフ市内の名所旧跡を、現地の学生さんの案内で巡った。修道院の地下に掘られたトンネルに休む聖者のミイラの数々、湯殿山の即身成仏と同じく、少し異様であった。夜は、ウクライナ演劇専門学校におけるワークショップである。全員が舞台に上がり、管絃や舞楽を、佐藤団長の解説のもと、素で披露した。所作に関することなど専門的な質問が出され、佐藤のユーモアをまじえた説明をセルゲイさんの名訳で、会場は笑いの渦となった。プレゼントの交換がなされ、僅かな時間であったが打ち解けたホットな時を過ごした。翌朝、今度は谷内さんが、ベルギーに住んでいる弟さんを訪ねるため、一行と別れた。
オペラ・バレー劇場の客席
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