10日は、いよいよ今回の旅行のメインである、サグラダファミリア聖堂における演奏である。バルセロナ市内に、他のどの建物よりも、一段と抜きんでて聳え立つ聖堂。建築家アントニオ・ガウディ(1852-1926)の残した最も有名な作品で、未だ建築中である。外尾さんの彫刻は、ガウディの最初に建てた塔の入り口上にあった。キリストの誕生を寿ぎ、楽器を奏で、歌を歌う人々を配したものである。ガウディは,キリストを意味する 170m の塔と,12 使徒を象徴するベル・タワーの建設を計画した。いつ完成するか分からない壮大な設計である。丁度外尾さんの彫刻の前の広場が、演奏会場である。三方の道路を遮断して、椅子が並べられている。それでも入りきれない人のため、遮断した両サイドの外側向けて、大型スクリーンが設置された。舞台は、上の舞台と下の舞台の二重構造で、
十の出演団体が、交互に準備し演奏できるようにしている。テレビの生放送とかで、舞台の正面に組まれた櫓のカメラばかりでなく、クレーンのカメラや、レールの上を動くカメラなど、かなりの設備が準備されている。舞台転換など、分刻みの念入りなリハーサルがあった。本番は、夜の10時である。かなり時間があるので、外尾さんの助手をつとめているマノロフさんの案内で、建築中の聖堂を見学する。見学が終わって休憩をしていると、外尾さんが来られ、現在進行中の現場に案内して下さる。タワーの樋の部分で、ルカ、マタイの使徒に縁のある彫刻が施されている。

 夜の帳もおりた9時、照明により聖堂が宙に浮かぶ。演奏会の始まりである。「世界の宗教−平和の音楽」題された音楽会は、1万人を超える聴衆を前に、各宗の団体が次から次へと演じていく。雅楽部は、午後10時20分過ぎの出演。管方装束で正装した演奏者が登場すると、静まりかえり、調べにのって「太平楽」の舞人が、勇壮に舞う。リハーサルの時、担当ディレクターに、何故、武具をつけているのに平和を象徴する曲か、と尋ねられた。曲の由来と、舞人の背中に負っている、矢を入れる「ヤナグイ」に、矢が直ぐつげないよう、逆さまに入っていることを教えると、フーンと分かったような分からないような顔をしていた。舞人が舞台を去り、演奏が終わり、礼をすると、万雷の拍手。ブラボーの声があちらからこちらから聞こえる。観光一つするわけでもない大変な旅行であったが、来て良かったと思った瞬間である。今度は、聖堂が完成した暁に、聖壇で演じることを、イランから運ばれてきたという、紅色の柱に約束して、聖堂を後にした。

 11日早朝、バルセロナを発ち、同じくフランクフルト経由で、日本へは12日の朝に到 着した。参加した学生一人ひとりが、大きな宝を魂に頂いて。(S記)

 

 

海外TOPTOP